のzの…今日の軟白栽培

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「良いところまで行ったのに何故…」

プロフェッサー・ブルックス・ケプカは実験室兼監禁室のモニターを眺めていた。

モニターには見るからに精悍そうな若者が上半身裸のままで映っている。彼の名前はジャッキー・チェン。ハイパーソルジャー計画によって世界支配を企むプロフェッサー・ブルックスに見出され、この監禁室がある倉庫に連れて来られた。手の甲からはなにやら白い長い物が4本ずつ突き出している。

「このミュータントは自己治癒能力に優れているのだ。だから捕獲し改造して攻撃性の高い武器を与えれば無敵のハイパーソルジャーになれると確信したのだが…」

助手「武器がホワイト・アスパラですからね…」

ブルックス「…そう見えるかね?」

助手「はい。自信を持って」

ブルックス「わからん。強化骨格化剤を注入した筈だ。強化骨化した硬くて鋭い爪が生えてくる予定だったのに」

助手「そうでしたね」

ブルックス「しかし何故ホワイト・アスパラガスが」

助手「お好きかと思って」

ブルックス「…どういう意味だ?」

助手「お好きでしょ? ホワイトアスパヴァ、痛いっ」

助手の首を絞め上げるブルックス

ブルックス「きさま、私の研究対象にいったい何をしたのだ!?」

助手「…な、何もしてませんよ。ただ私の研究である遺伝子組替の結果できた、どんな環境でも発芽して成長するハイパーアスパラガスの種を注入させていただいただけです!」

ブルックス「助手の分際で何でそんな真似を!?」

 助手「だって僕だって研究しているし、色々実験して成果残したいんだもん!認められたいんだもん!」

ブルックス「自分の実験材料でやれ! そもそもなんでホワイトアスパラガスなんだ!?」

少し首絞めを緩めるブルックス

助手「…そう、本来ならグリーンとホワイトで種類が違うわけでは無いんです。どこで変わるかというと育て方なんですね。軟白栽培といって遮光したところで育てるわけですが、それを遺伝子操作してですね、最初からホワイトアスパヴァ…(再びきつく締め上げるブルックス)」

 ブルックス「そんなことを聞きたいんじゃない!」

その時実験室のジャッキー・チェンがアスパラガスをパクりと食べた。空腹なのか次々と食べ始める。

助手「…そう、しかもあのアスパラガスは生のままでも十分柔らかくて美味しい。さらには収穫後何もしなくてもまた再び生えて来る。しかも一世代目よりも繁殖力が強化されてです。正に私の発明した世界の食料危機を救う画期的なホワイトアスパヴァ」

ブルックス「そんなことはどうでも良いのだ。どうしてくれるのだ? 私のハイパーソルジャー計画が水の泡だ!」

助手「いい加減にしなさい!」

助手がブルックスの手を払い除け、ブルックスの顔を殴る。

助手「ハイパー・ソルジャー計画などお止めなさい! そもそも何故その様な暴力的なことをしようとするのです! もし世界を支配したいのならば私のアスパラガスで世界の食料を牛耳ればいいのです! そうすれば世界中があなたに一目置くし平和的で手間も少ないでしょう!」

ブルックス「…確かに君の言う通りだな。恐怖で世界を支配するのは間違いだ。どうやら私は思いあがっていたようだ」

助手「わかってくれればいいのです」

ブルックス「…あれ…何だ?」

実験室兼監禁室いっぱいに無数のホワイトアスパラガスが充満している。

ブルックス「どういうことだ!?」

助手「少しばかり繁殖力の度合いが強過ぎたようですねーー!」

出口に向かって走り出す助手。

ブルックス「待て待て、置いてゆくなぁー!」

実験室兼監禁室が充満したアスパラガスで破裂すると、あっという間に建物全体をホワイトアスパラガスが埋め尽くしていった…。

 

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 

 

 

 

 

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