のzの…今日の始末のつけ方。

前回までのあらすじ

起死回生の放送をするために再びテレビレポーターを呼び、デンターXとシムロイドで一発逆転を狙ったヘボット重工のCEO橋口だったが、デンターXとシムロイドが戦闘形態に移行してしまい崖っぷちの状態が更に悪化。無駄に大きくしてしまったこの話、のzのは果たしてどうやって始末をつけるつもりなのか！？

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「まさかこんなことになろうとは…」

某超大国の国家安全保障アジア地区担当補佐官ラルフ・ヒュッターは小出市上空を移動中のヘリから破壊された街並みを見てそう呟いた。

高速増殖炉計画が事実上頓挫した時点で、プルトニウム239の不正な大量所持疑惑が日本にはあった。その調査中に浮上してきた日本原子力研究開発機構との取引企業であるヘボット重工の不穏な動きを察知した為、あのアプリをインストールする様に誘導する計画を立てたのがラルフであった。

「それがまさかこんなことの引き金になるとは」

ラルフは壁に額を打ち付ける。

そのアプリをロボットにインストールすると、史上最悪のマルウェアと呼ばれている『コニー』に感染する様にプログラムしてある。

「『コニー』に感染するまでは想定の内だった。問題はその『コニー』がこちらの想像以上に悪魔的であったということだ」

『コニー』はヘボット重工製のロボットにアプリがインストールされると自動的にDLされて感染し、それを媒介してネットワークへ侵入。プルトニウム239の保管容器製造組立を行う産業用ロボットのPLCへと感染し、欠陥品を作る様にプログラムされていた。

『コニー』の発動条件は極めて限定的であり、ある特殊な条件下でしか発動しない。また仮に発動したとしてもその範囲は限られており、外部に影響は及ぼさない”筈”だった。しかしその希望的観測は全て覆された。

「まさか…な。『コニー』開発チーム内に天才的な悪魔が紛れ込んでいたとは…。今さらそいつの特定は困難だし、している時間もない。そんなことよりも『コニー』の引き起こした事態収拾の方が先決だ」

眼下に広がる無数に伸びたケーブルの束が街を侵食している。それら無数のケーブルはまるで植物のツルの様に絡み合って縦横無尽に都市を覆いつくしている。それらは全てかつて『デンターX』と呼ばれたロボットの成れの果てである。いや正確には『デンターX』と『シムロイド』が絡み合って融合することで増大し、周囲にある機械類を巻き込んで巨大な植物の様に成長していったという方が正しい。しかもまだ増大・侵食し続けている。

「しかしこれをどうやって収束させろというのか…」

ラルフがヘリの機上で頭を抱えていたその頃、橋爪と田中はデンターXとシムロイドが対立していたその現場にまだ留まっていた。

田中「…いったい何が起こっているの？　なんだかもう私たちのレベルで解決できる問題じゃなくなってますよね？」

橋爪「こんなの一自治体レベルでも事態収束困難だよ」

田中「あのアプリ強制終了したら案外解決するとか…」

橋爪「まさか（と言いながらアプリ『先生そこ違います』を覗き込む）…あれ？　広告がいっぱい出てくるから邪魔で気付かなかったけど、一番下までスクロールしたら『セカンドオピニオン：別の医師の意見を聞きますか？　YES／NO』ってのが出て来た。…タップしてみよう」

田中「待ってくださいよ！　もしこれ以上酷くなったらどうするんですか？」

橋爪「ポチっとな」

シムロイドの声「セカンドオピニオン、別の医師の意見を聞きます。他のドクターと治療法を紹介してください。それまでは戦闘形態を解除します」

シムロイドの、ケーブルコードに寄って拡散された各パーツが次第にまた集ってくる。みるみるうちに元の身体に戻っていくシムロイド。

田中「凄いわ」

デンターXの声「相手は訴訟を取り下げたので医療裁判用形態を解除します」